ジーンズ

ジーンズ 久しぶりにタミール語の映画なのだが、何故か映像はラスベガスから入る。 例のジェットコースターがグルグル巻きになったタワーの夜景だ。あれっ？と思っていると、舞台はロサンゼルスへ。

【お話は】

インドからＬＡにやってきて、インド・レストランを経営、今では成功を収めているナーチャッパンには双子の息子、ヴィスとラムがいた。彼らは、医学部の学生で、父親の店を手伝っている。父の教育方針は、この双子の息子を「全く分け隔てしない」ことであり、２０歳にもなった息子はダブルベッドで一緒に眠り、着る服も全く一緒。このことが後のできごとの伏線となっている。

この兄のヴィスがある日空港でマドラス出身の娘マドゥとその祖母、兄に出会う。３人は、祖母の脳腫瘍の手術を受けるためＬＡにやってきた。手術を受けるのが双子が通う大学病院だったのはお約束。明日、手術というときに不安がる祖母を町に連れ出し、ＭＧＭスタジオやディズニーランドで踊り回ったり（これにはさぞかし回りの人も驚いたことだろう。それに、こんなに元気なら手術もいらないだろうに）、手術のミスを暴いて、再手術をさせ、慰謝料２００万ドルをせしめたり・・・と、ヴィスの八面六臂の活躍でおばあちゃんの具合もよくなり、いざ帰国。この間、ヴィスとマドゥは互いに惹かれ合っていることに気付くが言い出せないまま、３人はインドに向かう機上の人に・・・と思ったら、若い二人の様子に気付いたおばあちゃんの仮病で３人ともＬＡに残る。そして、告白。アメリカ全土を舞台に二人は踊りまくる。（圧巻はグランドキャニオンだな。）

ヴィスとマドゥの仲を聞いたナーチャッパンは突然怒りだし、「結婚はまかりならない。」という。その理由とは・・・。
実はオヤジも双子（しかも、結合双生児）でうまれた。弟のペーチャッパンは少しグズであったが、マドラスで仲良くレストランを経営していた。しかし、弟の嫁スンダラマが性悪なヤツで、兄嫁とのいさかいが絶えず、ついに双子の母はいびり殺される形で彼らを産み落として亡くなってしまう。失意のナーチャッパンはレストランを全て弟夫婦に与え、自らはアメリカに移住し、今日の成功を築いたのだ。その教訓から父親は「息子達の嫁は双子に限る」という信念を抱くに至ったのだ。

この父親の告白を聞いて、おばあちゃん、咄嗟に「この孫娘も双子。占い師のお告げにより、妹は別に育てられている。」と真っ赤な嘘をでっち上げる。この嘘、双子の弟の方も双子の妹と結婚しなければならないのだから、いつまでも誤魔化せる訳はないのだが・・・。

後半は、舞台をマドラスに移し、娘が自分と妹の二役を演じるドタバタが始まる。かわいそうなのは弟。実在しない人物に恋をしてしまうのだから・・・。ＣＧを駆使した二人の踊りなんてのも出てくる。これに、父の弟の破産と父親兄弟の入れ替わり、双子姉妹という嘘を知ったヴィスの激怒、それを失意の底にいる筈の弟ラムがなだめ、父と入れ替わった弟のペーチャッパンが結婚を認める・・・なんて波乱があり、最後は性悪と思ったスンダラマの一言でナーチャッパンがギャフンととなるところで、めでたしめでたし。

【見所など】

前半ののんびりした感じに引き替え、後半はバタバタっと話が進む。ひと波乱後ヴィスとマドゥの仲が元通りになると、今度は、万里の長城、ピラミッド、ピサの斜塔、エッフェル塔・・・と世界の七不思議の現地等での踊りが繰り広げられる。８番目の不思議が愛なんだってさ。

それにしても、終わり方が納得いかない。父親が義妹の一言で結婚を認め、次の瞬間には結婚式の、それもジュラシックパークみたいな場面（よく判らないでしょ？）が数分写って終わってしまう。ここは、丹念にタミル映画の手法で、父親のＯＫを貰い、喜びにふるえる二人に世界中で踊って欲しかった。

ヴィスとラムの双子の二役を演じるのはプラシャーント。衣装は常に同じだから、その分は楽だったろう。ラジニカーントとは違うすっきりした顔つき。で、ヒロインのアイシュワリヤ・ライも、ムトゥに出ていたミーナ達とは違い、顔は可愛く、胸は大きいのに、腰はしっかりくびれてプロポーション抜群。ミス・ワールドのインド代表に選ばれたっていうのも頷けるのだった。このほか、インド料理店のシェフ役のセンディル（ムトゥのテーナッパン役。道化だが重要な狂言回し）、厳格な父親（これも二役）のナーザル（ボンベイに出演）等、タミル映画でよく顔を見る役者が脇を固めていた。

（00.1.22　渋谷・シネセゾン渋谷にて）