評議員会における議決に関するメモ

H11.6.16　作成

　先の臨時評議員会における「都連の基金取り崩しに関する議決」について、何人かの評議員、監事の方からご質問を頂きましたので、以下、私見をまとめました。
ご参考まで。

１　あの議決は何に基づく議決か？

①　小生の質問に専務理事は当初「寄附行為第１３条第２項」に基づく議決であると答弁されました。

┌──────────────────────────────────┐
│寄附行為第１３条第２項                                              │
│　前項の特別会計・基金又は積立金の目的、管理及び処分の方法は、各特別│
│会計・基金ごとに理事及び評議員の現在数の３分の２以上の議決を経て別に│
│定める。                                                            │
└──────────────────────────────────┘

この条文は、アンダーラインを引いた部分でもわかるように、別の規約を作るための根拠条文です。

例えば、「評議員の選出方法は別に定める。」（寄附行為第２７条第６項）の規定は、『評議員選挙規則』を定めるための根拠となっており、このことは同規則の第１条に明記されています。

逆に言えば、個々の基金の実際の取り崩しを決めるための条文ではありません。そのための条文は、例えば寄附行為第８条（基本財産処分の制限）のように「・・・議決を経て、・・・処分をすることができる。」と書かれています。

②　小生が①の見解は誤りである旨発言したところ、専務理事は「財務委員会特別会計規程第３条（第１項）」に基づく議決であると訂正されました。

┌──────────────────────────────────┐
│財務委員会特別会計規程第３条第１項                                  │
│  この特別会計による資金の運用に関する基本計画および処分計画は毎事業│
│年度ごとに財務委員会で作成し、理事会および評議員会の承認をうけなけれ│
│ばならない。                                                        │
└──────────────────────────────────┘

この規定は、「毎事業年度ごとに財務委員会で作成し」た「処分計画」に関するものです。
しかし、ご存じのとおり、あの場にはこの要件を満たす『処分計画』は提示されていません。従って、本条を根拠とすることも全くもって無理です。

③　これ以降、臨時評議員会の場では、根拠条文についての明確な説明はありませんでしたが、敢えて、その根拠を規約等に求めるとすると、寄附行為第３５条第１項第６号に基づくものとしか説明ができません。

┌──────────────────────────────────┐
│寄附行為第３５条第１項                                              │
│  次に掲げる事項は、評議員会の議決を経なければならない。            │
│  （一～五　略）                                                    │
│　六　その他、この法人の業務に関する重要事項で理事会において必要と認│
│　　めるもの                                                        │
└──────────────────────────────────┘

　　しかし、理事会の総意として「必要と認め」られていないであろうことは、当日の理事会側の混乱を見ても明らかですし、教育本部長の不規則発言（理事同士の会話が聞こえたもので、多分、議事録には載らないでしょう）にも「財務委員会で決まってるじゃないか」とありました。
従って、あの議決は規約等に基づかない任意のもの（意思表明、決議の類）と言わざるを得ません。

その効力は評議員会の意思として関係者から尊重されるべきものですが、加盟団体等に対して法律上の対抗力（強制力と言い換えてもよいでしょう）を持たないと考えられますし、当然、理事会に対しても、規約上のお墨付きを与えたことにはならないと思います。

２　議決は成立しているか。

①　当該議決が行われた際、実際に「会議を開き続け、議決を行う」に必要な人数（定足数）がいたのかどうかについて検討してみましょう。
「基金取り崩しに関する議案」は、当日緊急上程されたものです。事前に知らされない議案について「書面によって」賛否は表明できません。また、「表決を委任」した人もいません。（そもそも、都連評議員会の委任状は委任の相手方が寄附行為に定められたような、ある特定の評議員を相手に委任する形になっていないので、「委任」とはなりません。）

従って、実際に出席していた者が定足数に達していたか、否かが問題となります。少なくとも議決の時点では５５名が出席しており、現在数（８１名）の３分の２（５４名）以上であるため、結果として議決は有効になります。

②　次に、当該議案が可決されるたのかどうかを検討してみます。
１で見たとおり、当日の議決は「任意の議決」、百歩譲っても寄附行為第３５条第１項第６号に基づく議決と言わざるを得ません。評議員会における議決は、寄附行為第３５条第２項で準用する同第３２条第２項が適用されます。

┌──────────────────────────────────┐
│寄附行為第３２条第２項（第３５条第２項による読み替えを行ったもの）  │
│　評議員会の議事は、この寄付行為に別段の定めがある場合を除くほか、出│
│席評議員の過半数をもって決し、可否同数のときは、議長の決するところに│
│よる。                                                              │
└──────────────────────────────────┘

　「任意の議決」であればもとより、寄附行為第３５条第１項第６号に基づく議決についても「別段の定め」がありませんから、あの議決の賛否は「出席評議員」の過半数で決められることになります。

小生に寄せられた質問には「重要なことなのだから、現在数の３分の２以上が必要だったのではないのか」というものが多かったのですが、そのような規定が存在しない以上、その内容の重大如何に関わらず出席数の過半数とすることに何ら問題はないと考えられます。

３　今後どうなるのか？

　先般の議決が、１の③で検討した　a.任意のもの、b.寄附行為に基づくもののいずれであると解するかによって、結論は変わってきます。

ａであれば、理事会に対して「精神的な支援を与えた」程度の意味合いしか持ちません。
ｂだとすると、当日の採決直前の議長の発言は「基金の取り崩しについて賛成の方の・・・」だあったと記憶してますので、その意味で一定の効力を生じる可能性があります。つまり、解釈は分かれると思いますが、「全ての手続きを省略して取り崩しを認めた」と主張することが可能であるということです。

４　今回の教訓

評議員会における議決に当たって、議長は必ず
　・　どの規約の何条に基づく議決であるのか
　・　可決の要件は如何なるものなのか
を明確に宣言することとすべきです。

なお、可決の要件等に使用される用語の定義は次のとおりです。

用語の定義

定数：その職に選び得る数の基準。都連の場合、理事(20～30名)、評議員(70～90名）とも幅を持たせている。
現在数：現在、実際に、その職に任命されている者の数。つまり、選挙等で選ばれ任命された数から、その後の辞任、死亡等の数を除いたもの。（「欠員」とは、定数に満たなくなった場合に用いるため、この場合の辞任、死亡等に使うことは不適当。）
定足数：会議を開会し、議決をするために出席が必要とされる数の基準。都連の理事会、評議員会では、現在数の３分の２以上の出席（書面表決をした者、表決を委任した者を含む）が必要とされる。

出席数：会議に実際に出席している数。寄附行為にはない用語。開会に当たっては、書面表決者、表決委任者を含む。採決に当たっては、当該議案について書面表決をした者、表決を委任した者を含む。
可決に必要な数：一般の議案については出席数の過半数。特段の定めがある場合には、それに従う。都連の寄附行為においては、特別の定めは全て現在数を母集団（分母）にしている。

活動報告のトップへ

１ あの議決は何に基づく議決か？

２ 議決は成立しているか。

３ 今後どうなるのか？

４ 今回の教訓

１　あの議決は何に基づく議決か？

２　議決は成立しているか。

３　今後どうなるのか？

４　今回の教訓